栃木県が農産物知的財産戦略を策定

栃木県は、農業生産にかかわる知的財産権の取得促進や、権利の認識向上を狙い、県農産物知的財産戦略を策定した。新品種開発やブランド化は農業の活性化に不可欠なことから、その創造、保護、活用が円滑に行えるよう方策を明記した。来年四月、農産物知的財産権センター(仮称)を設け、権利侵害の監視などに取り組む。県農務部によると、こうした戦略をまとめるのは福岡県に次いで全国二例目という。
 同部によると、二〇〇三年の知的財産基本法施行後、農産物の特質を権利化し、「守り」と「攻め」の両面で知的財産の活用を重視する機運が全国的に高まっている。本県ではイチゴの「とちおとめ」やナシの「にっこり」などの新品種や、イチゴの養液栽培システムなどの新技術が開発され、地域農業に大きく貢献している。

 一方、新品種を登録する品種登録の本県の件数は百件と、関東地方で最も少ない。種苗会社の本社がある東京都(千三百一件)、研究機関が多い茨城県(六百四件)は別格としても他県に水をあけられている。

 また、二〇〇一年にとちおとめの種苗が韓国に持ち出され、栽培されたイチゴが国内のスーパーで販売されるなど、知的財産権の侵害事例が県内でも顕在化している。

 そこで戦略では、知的財産権の創造、保護、活用を一連のサイクルと位置付け、推進組織として同センターを設置。センターは知的財産権の出願、登録手続きの案内や、講演会の開催などの啓発活動などを担当する。

 そのほか、権利の収支状況などを一元的に把握するデータベースを作成。専用ホームページで、登録品種の特性や栽培方法など情報を広く公開するとともに、利用許諾の必要性を周知して知的財産の適切な活用を促す。また、品種登録を促すため、発明者に県から支払われる補償金の配分比率見直しを検討する。

 権利侵害への対応では、種苗販売店や東京都内の市場を巡回するほか、インターネット上でも種苗の販売を監視。実例があった場合は警告を発する。本県農産物の輸出が拡大していることから、海外で商標権の取得を計画的に進める。

下野新聞 - 2006/12/14